途端に陳腐、だけれど妖艶
金魚が、それはそれは綺麗な光の中で泳いでいるという噂を小耳に挟んだ。
その噂の真実なるところ、それはどうやらアートアクアリウム展とかいうやつで、東京やら大阪やら各地を既にまわってきて大人気の作品展示だという。それがついに博多にも来たというので、ちょっとそれは見に行ってみようかしらだなんて思ったりしたのが、これ先週の話。
ちょうど束の間の帰省をしていた、ロンドンの大学に通ってる友人を捕まえる。そして連行する。世間はそれを、誘拐とも呼ぶらしい。
足を運んだその先は、博多駅。なんてったって会場は、JRホールだった。
一面の金魚が、段々になって押し寄せる。
水槽を上から見るだけでなく、横からも見られるのがとても良い。
千匹の金魚を使ったという(本当なんだろうか!)、花魁という作品。
この下に流れていく水の着地点にも、数多くの金魚が周遊している。
それぞれの光は絶え間なく七色に切り替えられていて、ときたま白色の蛍光灯のような光のターンがやってくる。するとその瞬間に、暗い会場のせいもあってか、どこかロマンチックな浮世離れしていたはずの空気感が、ふっ、と一瞬で現実に連れ戻しにやってくる。
すると会場のあちらこちらの、ちょっと見たくない惜しい設営の裏側が目に飛び込む。おいおい、である。いやー、何度見ようとも、あの光の色だけは抜いたほうが良いと思う。
こちら、華道と金魚のコラボレーションであるという。
己が辛口なことを自覚してモノを言うけれど、この花や実などが全部『造花』であることはどうにかならないのかな、とこれにも疑問符がつく。陳腐だ。
総じて美しく、それは噂通りに妖艶な展示ではあったけれど、表面だけつるっつるという感じの印象を受けた。
もう少しの丁寧さを持ってすれば「完璧に」美しくあれるような部分が素人目にも幾分かあって、ちょっと残念だったりする展示だった、と思う。(出目金の魚種がとても可愛かったのは、ポイント高かった!)
ピンク色の光と赤色の光で照らし、提灯で甘ったるい光の色彩を更に付け加えた光の世界。それはもう映画「さくらん」そのまま、というよりもまさに蜷川実花の世界観そのまま。(この展示、蜷川実花さんじゃないんですけどね、意識は確実にしてますね)
うんうん、美しいよ。素晴らしいよ、と思いつつ。
その毎度変わらぬ、彼女のその色彩手法に飽き飽きとした人間にはこれは退屈な展示になるに違いない、と思ったのでありました。
いやはや、これ蜷川実花感すごい。
あとこれで確信したのは、蜷川実花の世界観の汎用性、真似しやすいな、すごいなあ、というところ。