作家・ライター
シンガポール出身,元気なシングルマザー
鬱々とした陰気な感情を,
軽やかでポップな文章にするのが得意です

お仕事&執筆依頼などはこちら

その他のエッセイはこちら

8年間の水平線

5年も通った大学生活が、まもなく終わる。(※ ただし無事に単位が揃っていれば…)
 
人生最後であろう、いわゆる『学校での授業』を終えた日、バスに揺られながら窓から見える景色を眺めていた。福岡は都市高速を、普通のバスが走るのである。

バスの窓。
そこから、海が見える。淡い水色の水平線が続いている。
ああ気がつけばこの道、8年間もバスで通った道なのである。

f:id:areyoume17:20150205015415j:plain

(2012年 バスの中から撮影)
 
 
同じ中学校から進学する人が居ない高校へ行きたい、その一心でわたしは自分の地元から遠く離れた私立の高校へと進んだ。クリスチャンの由緒正しきその学校は、高速バスで地元から都会のバスセンターへと出て、そこからまたバスを乗り継いで合計片道2時間。往復、4時間。

雨の日も寒い日も、わたしは黙々と3年間、通った。
福岡の朝は東京よりも遅いものだから、冬の朝はまるで本当に深夜1時頃のようだった。朝5時。わたしはまだ電灯ちらつく街中、始発の高速バスで通った。
 
高校3年の最後の日、わたしはバスに揺られる中、開放感に満ちていた。
「もうこの道を、通う事は無いだろう」
そんなことを感慨深く思っていた。
しかしまあ、縁とは不思議なもので、わたしはその1年後、その道を毎日通らざるを得ない大学へと進学した。
 
 
ということで、大学は5年間通ったもんで、合計8年。
わたしはこの水平線を、8年間も眺めていたことになる。

遠くに見える小さな島、手前の百道浜。 
都会から高速道路にのれば、右手に工場があらわれ、ラブホテル街がちらりと見え、大きな橋を渡れば左手には福岡ドーム、福岡タワー。
さらに進めば室見川
椎名林檎が好きな人なら、たまらない町並みだろう!)
 
 
水平線はいつも、群青色だった。
まっすぐに美しく、いつだって爽やかなグラデーションでわたしを迎えた。
高校入学最初の日、こんな素敵な景色を毎日見れるのかと感動したのを覚えている。
 
美しい景色はやがて日常となり、ありがたみはとうの昔に消えてしまったが、それでもふと通学中に綺麗なグラデーションに気づいた時には、頑張ろうと思えた。
つらいことがあろうとも、通わざるを得ない。学校へ行こうとする玄関で吐くこともあった。つらいつらい。高校になんて、大学になんて行かなきゃいいのに、行かなくちゃいけない。わたしはそんな妙に縛られた気持ちのなか、どこかこのグラデーションの水平線に、それは確かに助けられていたのだろう。
 
8年間も通えば、水平線のありがたみは減るばかりである。
それでも、最後の日にはやはり感動したのだった。
わたしを支えてくれた風景、海沿いの街にいるんだという意識。
 
はー。
振り返れば振り返るほど。
いよいよ学生でなくなるのだなあ、、、、早く社会に出たくて仕方が無かったはずだったのに、今じゃいつまでも学生でいたいよと願う、矛盾なわたしである。
 
 
多分社会人になった後に、この景色を自分から積極的に見に行く事はないだろうと思う。でもふと目にした時に、わたしはこの8年間を思い出すのであろう。

出来ればその時には、やはりバスに揺られていたいとも、思う。
 
 
卒論の謝辞かのごとく、皆様にも、そしてこの風景にも感謝なのである。
有難う。まもなく卒業、できそうです。
 
追伸、卒論無事提出できました。
 

目次