田舎は政治家のポスターで溢れているし、鯉は食べられる
家の壁面に自民党やら公明党やら、政治家のポスターを貼っている家がやたらと増えてきたなと思ったならば、既にそこは田舎である。
今日は佐賀県へと行ってきた。佐賀県有田市。
有田焼という名の陶器で有名な、それは小さな田舎町である。
わたしは佐賀県のことを愛をこめて福岡県の植民地と呼んでいるが、からかえばからかうほど何故かいつも佐賀県民は嬉しそうに自虐的にのってくるため、わたしはそう呼び続けている。決して、わたしが意地悪なのではない。
個人的見解ではあるが、この手の話をする時の佐賀県民はマゾがとても多いと思う。
博多駅から有田駅へ行くには、長崎県の佐世保駅行きの電車へ乗る。
その途中で降りるというシステムだ。もはや長崎行きのおまけのような存在として途中に佐賀の各駅があるかのように思えてくる。やはり植民地だ。
車窓から見える風景は、ひたすらに緑色だった。
視界の95%がグリーン。癒やしというよりもはや暴力的に緑、緑、緑。
田んぼと山がひたすらに続く風景は、最初こそ『いいなあ、癒やされるなあ〜』と思えど、段々と1時間も見ていれば飽きてしまう。ちょいちょいと近代的な建物が挟まり、変わり映えのしない田舎の風景。ポツポツと離れて建つ民家に、段々と政治家のポスターが増えてくる。ああ、田舎だ。
わたしは今、福岡に住んでいるけれども、東京も含めて地方都市なんかでそこそこに俺は都会だ!と言い張れる都市は日本には何県あるのだろう。多く見積もって7つぐらいだとしても、それならば40の県は田舎ということになる。でもその40が、この日本を最も数的にも支えている。
東京がいくら大暴れしたって、大阪や名古屋とタッグを組んだって、40の県が反抗すれば日本の流通や経済は崩壊する。
こういう見慣れた退屈な田舎が、この日本ではほとんどなはずで、つまりこの国のほとんどを支えているのだ。スタバもヴィレバンも、彼らには遠い存在だ。そりゃイオンが地元に現れたならば、イオンは田舎の救世主として君臨できるわけだ。
イオンは、今、田舎にとっての文化を形成している。そりゃそうなる。
さて今日、そんな佐賀県有田市の地元の人間に『恋は好きか?』と唐突に聞かれた。
あらやだ、そんなロマンチックなことを突然聞くなんて!と照れたところ、それは『鯉(コイ)』の話だった。マジで紛らわしい。
鯉か、鯉。
太宰府天満宮の池で綺麗に泳いでいる姿しか見たことがない。ひえええ〜食べられるんだな、鯉ってのは。想像がつかない。
正直に食べたことがないと言うと、嬉しそうに鯉が美味いと評判の地元の料亭に連れて行ってもらえた。
橋を渡ると、料亭が現れる。
今日連れて行ってもらったのはここ。
本当に美味しい店は食べログにも、ぐるなびにも載っていない。
検索したって情報が少ない。
これが地元の人が教える、美味しいお店なのであろう。
鯉というのはそのまますぐに食べると泥臭いらしく、普通は食べる1ヶ月ほど前に綺麗な水槽に取り出して泳がせて臭みが抜けるのを待つらしいのだけれども、こちらはそれを3ヶ月もしてから調理するという。
そんな説明を聞くと、ますます期待が高まる。
出てきた鯉の刺盛りは、圧巻の鮮やかさだった。
どーーーーん!
うん、美しい!
その一言に尽きるね、まったく!
そのボリュームもさることながら、まるで『脂を綺麗に抜いたあっさりとした鯛』のような上品な味わい。うまい、うますぎる。酢味噌に紫蘇と葱を配合し、自分だけの調味料をブレンド。それを絡めて食べる、肉厚な鯉の刺身。
これだけ食べて、前菜やら茶碗蒸しやら、鯛汁ならぬ鯉汁までをもたっぷりと頂いて2500円ほど。なんということだろう。この日本において、この現代日本において、こんなことがあっていいのだろうか。(ちなみに上にのっている白いのは皮の部分らしい、こちらは淡白で歯ごたえが良い)
わたしはこの時、もはや福岡県が佐賀県の植民地になってもいいのではと初めて思った。
40の田舎の県には、きっと美味しいものがこれまた散らばっている。東京と大阪に媚び売って仲間になっても、名古屋とも仙台とも結託したとしても、きっと僕らはこの40の県に勝てない。だから田舎はあなどれない。わたしはなんだかんだ言いながら、結構こういうクソ田舎、大好きなんですよ。
人生初の鯉、絶品でございました。
佐賀、愛してる!
(おまけ)
その後、有田市の歴史公園へ寄ると不思議な風景が広がっていた。
これだけ見るとなんのこっちゃと思うかもしれないが、この柵から奥は立入禁止であり、奥の大きな岩まで数百メートルも離れている。
ここは、大きな大きな岩山だったという。
有田焼にふさわしい良質な陶器の原料となる石が多く取れるとのことで、ダイナマイトで爆発しては削っていき、その結果ここにあった山は綺麗になくなったのである!
まるで何かのアトラクションか、映画のセットのごとくここだけ唐突に砂漠のようになっているのだ。あまりに奇妙な風景だった。本当にだだっ広い。やまびこを叫べば、跳ね返らなそうなほど遠くの岩肌は遠い。
不思議な、不思議な風景だった。
佐賀県、結構おもしろいじゃん。
これからも福岡の、植民地でいてくれよ。愛してるぜ。