作家・ライター
シンガポール出身,元気なシングルマザー
鬱々とした陰気な感情を,
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冬だけ眠り姫になる、季節性情動障害との戦い

 

お布団にもぐって、目覚まし時計をかけずに眠れるところまでとことん眠る生活は、果たして本当に幸せなのだろうか。

 

昨夜、夜24時に寝たはずのわたしは、今日の夜20時に目を覚ました。タイムワープしたような気持ちだ。しまった、と声に出しながらカレンダーと時計を見つめる。おみごと、まさかの20時間睡眠である。

途中、トイレにも行っていない、本当に布団の中にいたまんま、である。10時間睡眠でも普通は多いというのに、20時間。ぐっすり、ひたすらに深く眠っているのである。ちなみに目覚まし時計をかけたとしても、鳴りっぱなしのままわたしは気がつかない。(つまり、そのまま鳴り続けると近所迷惑になるので、かけないようにしている)

夫はきちんと起床し、布団から出ずに気持ちよさそうに眠っているわたしの寝顔を見ながら出社したようだ。かたじけない。

 

毎日決められた時間に起きて頑張って働く人間には、アンタ幸せだね、なんて言われるけど、好きでこんな生活をやっているんじゃない。とにかく眠い、眠いのだ。だるい、だるいのだ。できれば日経ウーマンに特集されてるような、バリバリと働く女性になってみたいのだ。本当は。

フリーランスになったのには、こんなカラダと向き合うため、という理由もある。もはや、そんな生活には本当についていけないのだ。

 

長く眠ってしまったあとは、水分不足で偏頭痛がひどい。まずは水分を飲んで、ひと呼吸。もはや夜だけれど、少し窓を開けて酸素をカラダに取り入れることに必死になってみたりする。水を飲んで深呼吸をすれば、ほんの少し、現世に戻ってきた感覚を覚える。

よし、と決意して風呂に入る。まったく活動をせず、ただベッドで眠っただけのカラダは、たいして汚れていない気がしてしまう。でもここで風呂にも入らずに過ごしてしまえば、うーん、人間としていよいよ末期な気もする。そんな最後の理性のようなものが、わたしを湯船へと突き動かす。

 

ちゃぽんと湯船につかり、丁寧に髪の毛を洗う。せめて、夫が帰ってくる前には清潔感いっぱいでいたい。

風呂から上がり、香水をひと振り。夫にしか会わないのに、薄化粧をほんのちょっと。

 

いざ家事を済ませ、メールチェック。そして気合を入れて、仕事をダダダっと完了させる。原稿を書き進める。原稿、原稿、原稿。

わたしが活動できる時間は、3時間。ウルトラマンの3分みたいなもんである。時間が過ぎれば、ピロンピロンと停止音が脳内で鳴る。あ、無理だな、と思えば、本日これにて終了。閉店ガラガラ。原稿はちょうど完成した模様。編集にメールで送信して、寝る準備をする。このへんで夫が帰宅してくるので、一緒に眠る。はい、おやすみ。

 

1日に3時間しか働いてないの? と人はわたしに言う。

はい、そうです。

 

むしろ、3時間で済ませられるように、わたしは仕事を早く終わらせるスキルを持っています。それがわたしの自慢であり特技であり、というか、この低燃費でダメなカラダを持ってしまった人間ゆえの、苦しみ抜いてなんとか生まれた能力なんです。

それのおかげでなんとか並大抵のお給料くらいを稼いでいます。

 

もちろん、20時間眠る日は珍しいほうで、10〜15時間のどれかという日がほとんど。それはバラバラだけど、総じてとっても長いのは確か。普通の会社員で、残業までしてたらとてもじゃないけどこんなに眠れるわけがない。もしもそれでも会社員を無理して続けていたら、わたしは道端で眠ってしまう(実体験あり)。

 

だけどこんな生活。ときに、虚しくなる。孤独になる。

友達とのランチの予定をうっかり長く入れそびれてしまうと、夫との会話だけが、社会と自分をつなぐ唯一の接点に思えることがある。わんわんと泣いてしまう。わたしも社会の歯車のひとつになりたいよ〜!

でも、それだけ。だからと言って自殺するとかではない。本当に、なんなのよ、ってな感じで自分のカラダがムカつくだけなのだ。

 

そうです、これが季節性情動障害、簡単に言うと季節性のうつ病ってやつ。

わたしはこの症状を16歳くらいのときから繰り返している。心が病んでいるというよりは、もはや冬は起きられない体質(またはどこででも気絶したように眠る体質)である、それだけなのだが。

生まれ育ったシンガポールにいるときはこんなことはなかった。複数の医者とも相談したが、どうやらこの病気は日照時間が関係しているとも言われているらしい。確かに、日本の冬は陽が短い。

 

だいたい、1年のサイクルで、元気な時期と過眠の時期が交互にくる。毎年11月頃からうつ病のようになって、過眠になり、3月下旬から少しずつ元気になって、夏なんて元気100倍ってな感じだ。

 

それを象徴するかのように、大学時代、前期の単位は全て取れるのに、後期は必ずほとんどを落とした。その感覚を自分で掴んでからは、前期にできるだけ単位を取りきって、後期は家でできるアルバイト(赤ペン先生など)だけをやって、あまり外に出なくてもなんとかなるシステムを作り上げていた。

こうやって自分のカラダと付き合っていくのだな、と覚悟したのが20歳の頃。現在、26歳、なんとか引き続き付き合っている。

もちろん、冬の季節は長い。途中、出張や用事やなんやかんやは入るが、その時は気合いで乗りきったり(ただし反動で毎回胃潰瘍になって、入院したりする)、起きるための薬を飲んだり、ときどきに合わせてそれなりの工夫をしている。

 

そんなわたしを、夫は「眠り姫みたいだね」と笑う。

 

ありがたい。こうやって笑い飛ばして許してくれる人が夫でよかった。ああもう、愛してる!

寝てばかりなので、部屋はそもそも散らからない。効率よく家事も仕事も終わらせることを心がけているので、掃除や料理、そして仕事もなんとかなっている。理解ある編集者のみなさんにも、頭が上がらない。

みなさんの助けによって、冬の間は生きながらえています。

 

というのも、最近少しずつ起床時間が長くなってきているので、ようやく冬が明けたという実感をしているのだ。

精神的な雪解けを感じており、気分が良い。元気な、活動的な、8時間睡眠で充分なわたしがカムバックする。だから、仕事をする時間も増やすことができる。嬉しい。夫とデートする回数も増えるだろう。

 

こうやって笑い飛ばせるようになるまでには、時間がかかった。でも、人間のカラダは仕方のないことがいっぱいある。生理痛で毎月動けないから会社員を辞めた、というひとも知り合いにいる。神様を恨むしかないけれど、それでもわたしたちは生きていかなくちゃいけないから、工夫していくしかない。

なんだか思い通りにいかない自分のカラダに苛立っているひとは、深呼吸して仲間がいっぱいいることを思い出すといいかもしれない。

 

 

写真は先日料亭で出された料理。春らしい枝が添えられていて、季節の変わり目を感じた。

 

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